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製造業の設備保全DXはどこから始める?配管モニタリングシステムWeb化の実例

本記事では、株式会社エルボーズが、自社の月額制開発サービス「ATTEND biz」を通じて、株式会社CASTが展開する配管減肉モニタリングシステムのWebアプリ化をサポートした事例を紹介します。

製造業の設備保全DXを検討する中で、「現場に人が入らなければ状況を確認できない」「情報が現場ごとに分断されている」といった課題に直面するケースは少なくありません。
本記事では、設備保全の現場が抱えるこうした課題に対し、Webアプリ化という選択肢がどのような背景で検討され、どのように実装されたのかを、実例をもとに整理します。

CASTが展開する配管減肉モニタリングシステム

製造業の設備保全DXで課題になりやすいポイント

工場やプラントの設備保全では、高温・高所・狭所といった環境条件が前提となるため、業務が人に依存しやすく、安全面や作業負荷の課題が残りがちです。

現場に立ち入らなければ確認できない保全業務

従来の配管検査では、作業員が実際に現場へ入り、検査装置を用いて点検する必要がありました。そのため、危険作業が避けられず、検査頻度や対応スピードにも制約が生じていました。

本社や他拠点から把握しづらい情報構造

また、保全データが現場内の専用端末に閉じているケースも多く、本社や他事業所から状況を把握しづらいという構造的な課題もありました。

配管減肉モニタリングシステムをWeb化した背景

こうした課題を背景に、株式会社CASTは、株式会社エルボーズが提供する月額制開発サービス「ATTEND biz」のサポートのもと、配管減肉モニタリングシステムのWebアプリ化に取り組みました。

CASTの配管減肉モニタリングシステムは、高温部・狭所・高所にも「つけっぱなし」にできる薄型超音波センサーを採用しています。一方で、従来はデータを確認するために、工場内へ専用パソコンを持ち込み、センサーと接続する必要がありました。

工場内での機器接続は、静電気による引火や爆発のリスクを伴います。
そのため、データをネットワーク上に格納し、Webブラウザで安全に閲覧できる仕組みが求められていました。

開発レポート|Webアプリ化に至った課題と判断

本プロジェクトでは、株式会社エルボーズがATTEND bizの開発チームとして参画し、Webアプリケーションの設計・開発をサポートしました。
以下は、株式会社CASTの皆さまへのインタビュー内容です。
株式会社CASTの取締役・深山蘭様、エンジニア・田中智季様、広報・小溝朱里様にWeb化の背景や開発過程について伺いました。

▼製造現場での安全な配管検査の実現に向けて、Webアプリ化の開発を開始

――ATTEND bizに開発を依頼した経緯を教えてください。

小溝:
2000年頃に当社のコア技術である独自の薄型センサーを開発し、その技術を活かせる場所を探していました。約20年の時を経て「あらゆる場所にセンサーを」をミッションに、熊本大学発ベンチャーとして2019年に創業しています。

田中:
創業後、当社は高温部・狭所・高所にも「つけっぱなし」にできる配管減肉(※1)モニタリングシステムを製造・開発しています。このシステムによって、人が危険な高温部・狭所・高所にある配管に近づき、直接減肉を検査する必要はなくなりました。

※1…減肉:高温・高圧の水流による摩耗や、化学的な腐食によって配管壁の厚みが薄くなる現象のこと。

しかし、センサー自体は高温部・狭所・高所に「つけっぱなし」にできますが、モニタリングをするためには、専用のシステムをインストールしたパソコンを工場内に持ち込み、配管の足元まで行き、センサーとつながなければいけません。

つまり、危険な工場内に人が立ち入る必要は残っていて、安全性が十分に確保できたとはまだ言えない状況でした。しかも、センサーとパソコンをつなぐ際のわずかな静電気は、引火や爆発を誘引するリスクがあります。

現在のお客様は主に、石油プラント企業や製薬企業など化学工場で製造を行う企業。化学工場では可燃性ガスが放出される可能性があるので、工場内で使用する機器は、引火や爆発を誘引しない対策をとった構成にする必要があります。

可燃性ガスが放出される環境で使える製品にブラッシュアップしていくために、まず会社の製品開発としては一定の規格認証の取得が必須でした。

また、モニタリング時の現場への立ち入りや作業の必要性を極限まで減らし、安全性を確保するために、データをインターネット上に格納し、ウェブアプリで閲覧できるようにすることも必要です。その一環としてWebアプリの開発をしたく、ATTEND bizさんにWebアプリの開発をお願いしました。

▼納品で終わりではない。ATTEND bizの伴走するチームのカタチ

――多くの開発会社がある中で、なぜATTEND bizを選ばれたのですか?

深山:
以前、別のソフトウェア開発もATTEND bizに依頼したことがありました。当時の社内には、ソフトウェアの仕様や開発に必要なエンジニアの数、予算などをどのように決め、どう進めるのかわかる人がいなかったのです。依頼する会社を比較検討するほどの知識もない状態でした。

そのような素人なので、ときにはエンジニアの方にとってかなり無理なお願いをしてしまうこともあったのですが、非常に柔軟に対応していただきとてもありがたかったという体験もあり、配管減肉モニタリングシステムの開発もATTEND bizさんが候補に上がりました。

田中:
現在は私がエンジニアとしてCASTの開発まわりを担当しています。ただ、サーバー管理からアプリケーションの開発までのすべてを、私一人のリソースで開発するのは難しそうでした。

また、私もモニタリングで得られたデータ周りに精通しているわけでないので、深山が言ったように柔軟にご相談ができて対応してくださるATTEND bizに依頼しました。

深山:
初めて代表の小谷さんとお会いしたとき「ただ作ったものを納めて離れるのではなく、エルボーズはエンジニアチームを一時的に貸し、委託いただいた企業にもノウハウが残るように一緒に考えていきます」とお話ししてくださったんです。その言葉に感銘を受けましたね。

▼ハードウェアデータをソフトウェアへ。ATTEND bizにとっての新たな挑戦

――開発過程では、ご期待に添える働きはできていたでしょうか?

田中:
アサインいただいたエンジニアの方が、実績を積まれている非常にスキルの高い方でした。何事も迅速に対応してくださいましたし、こちらの些細な困りごとや質問にもしっかり答えてくださいました。

今回、Webアプリ上からモニタリングセンサーに測定指示を送る処理があったのですが、通常のソフトウェア開発ではあまり使わない通信方式を使っていたんです。そのあたりの理解も早く、かなり助けていただきました。

――ATTEND bizにとってハードウェアとの通信はあまり実績がなかったので、逆にCASTさんに助けていただいた部分も多かったです。

田中:
モニタリングセンサーから送られてくるデータをWebアプリ上でビジュアル化する部分は、一般的なソフトウェア開発をされているエンジニアさんにとっては慣れない作業だったと思います。

途中で立ち行かなくなり増員が必要なタイミングがあったのですが、ほとんどタイムラグなくエンジニアさんをアサインいただけたのも良かったです。

――ハードウェアからのデータをWebアプリ上でビジュアル化するのは、ATTEND bizの中でもベテランのエンジニアが担当していたのですが、とても苦戦していました。

そのため全体のスケジュールに影響を出してしまったのは反省点です。今回をきっかけに、エルボーズ内でもきちんと対応できるよう考えていきたいと思いました。

田中:
既存のデスクトップアプリとWebアプリとでは、システムの言語から違いましたからね。

でも「どうしたら似たようなことができるか?」と、エンジニアさんと何度も意見交換させてもらいながら、最終的にはデスクトップアプリのような見た目にしていただけて、ありがたかったです。

配管減肉モニタリングシステムのモニタリング画面
配管減肉モニタリングシステムのモニタリング画面

▼“お客様の求める製品”が完成したCASTと、ATTEND bizが歩む次の挑戦

――リリース後の反応はいかがですか?

田中:
展示会にも出展しましたが、配管減肉のモニタリング時の事故リスクを減らすよう製品開発を進めているなかで、その具体的な事例として非常にアピールしやすくなりましたね。副産物的として、データを無線でネットワーク上に格納できるおかげで、連携先を柔軟に変えられるようになりました。そのため「自社クラウドにデータを格納することは可能か?」といったご相談なども来ています。

――今後の展望をどのように考えていますか?

田中:
開発の観点では、Webアプリの画面をお客様がより使いやすい形にするのが次の課題です。またビジネスの観点では、お客様に受け入れてもらうことですね。

小溝:
最初にもお話ししたように、CASTは大学発ベンチャーとして出発し、ようやく研究結果を活かせる製品をお客様に届けられる状態になり、当社としては大きく前進することができたと思っています。田中が言うように、これからしっかりと製品を届けていきたいです。

――ATTEND biz開発チームへの率直な評価をお聞かせください。

田中:
こちらがソフトウェアのシステムのことをわかっていなくても作ってもらえたので、非常に助かりました。

深山:
社内リソースがなかったのですが、ATTEND bizに必要な人員を補っていただきました。おかげで、私たちが目指す配管減肉モニタリングシステムの実現までのスピードがぐんと早まったので、とても感謝しています。

――率直なご意見、ありがとうございました!

先ほども話題に挙げましたが、今回はハードウェアとソフトウェアの連携というATTEND bizにとってもチャレンジングな開発でした。

ご迷惑をおかけしてしまった部分もありましたが、振り返りもしっかりさせていただいたので、今回の開発で得た経験を今後に活かしていきたいと思います。こちらこそありがとうございました!


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本記事で紹介した事例のように、製造業のDXやシステム開発では、
「どこから着手すべきか」「どこまで外部に任せるべきか」といった判断に悩む場面も少なくありません。

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