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AIで一部の業務を5倍速くしても、生産性が上がらない理由|見るべきは「業務のつなぎ目」

AIを導入して、ある作業が5倍速くなった。
それなのに、組織全体ではそれほど生産性が上がった感じがしない。

こうしたことは珍しくありません。

ある業務AをAIによって5倍速く処理できるようになっても、その次の業務Bの処理能力が変わっていなければ、業務全体が5倍速くなるわけではないからです。

Aが100個の成果物を作れるようになっても、Bが2個しか処理できないなら、全体として進むのは2個です。
つまり、AI活用を見るときに重要なのは、個々のタスクがどれだけ速くなったかだけではありません。

仕事が次の仕事へ渡る「業務のつなぎ目」まで含めて見る必要があります。

エルボーズがリアル産業のAI・DX推進に関わる中でも、こうした業務のつなぎ目は重要なテーマのひとつです。
この記事では、Podcast「リアル産業とAIの現場トーク」で議論してきた内容も踏まえながら、AI活用をタスク単位ではなく、業務フロー全体から考えます。

個々のタスクは速くなっても、次の工程が動けるとは限らない

たとえば、会議後の議事録作成をAIによって大幅に短縮できたとします。
議事録を作るという作業だけを見れば、AI導入は成功しています。

しかし、その議事録を受け取った人が、

  • 結局何をすればいいのか
  • 誰が担当するのか
  • いつまでに対応するのか

を改めて整理しなければならないとしたら、次の工程はすぐには始まりません。
速くなったのは「議事録を作る」という一つの作業だけです。

個々のタスクは成果や工数が見えやすい一方で、実際の業務では、その間にある整理・確認・情報収集・受け渡しが生産性を止めていることがあります。
AIで一部の作業を高速化することと、業務全体が滑らかに流れることは、必ずしも同じではありません。

業務の「つなぎ目」では何が起きているのか

では、仕事が次の担当者や工程へ渡るとき、どのような詰まりが起きるのでしょうか。

①成果物が、そのまま次の行動に使えない

会議で方針が決まっても、その内容が「誰が、何を、いつまでに」という粒度まで整理されていなければ、次の担当者はもう一度内容を読み解く必要があります。

調査業務でも同じです。

AIが大量の情報を短時間で集めても、その結果が長いテキストのまま渡されれば、受け取った側には「判断に使える形へ整理する」という仕事が新しく発生します。
大切なのは、Aを速くするだけではなく、Aから出てきたものを、Bがそのまま使える状態にすることです。

たとえば、会議のアウトプットを単なる議事録で終わらせず、担当者・期限・次のアクションまで整理する。
こうしてAの出口をBの入口に合わせることで、次の仕事へ移りやすくなります。

②判断に必要な情報が散らばっている

次の工程に必要な情報が、一か所にあるとは限りません。
顧客情報はExcel、売上は経理システム、営業状況は別のツール。
こうした状態では、担当者は判断を始める前に、まず情報を探して集める必要があります。
Aという作業をAIで高速化しても、Bが毎回材料集めから始まるのであれば、業務全体が流れる速度はそれほど変わりません。

エルボーズでは、こうした状態を「AIにやさしくない環境」と表現しています。
これは、AIにとって扱いやすい形で情報が整理・接続されていない状態のことです。
人が毎回複数の場所から情報を探し集めなければならない環境は、AIにとっても扱いやすい環境とはいえません。
AIを導入する以前に、次の工程が必要な情報を受け取れる状態になっているかを見る必要があります。

③前提が共有されず、確認の往復が起きる

業務Aと業務Bを担当する人の間で前提がずれていると、成果物を受け取ったあとに確認が発生します。

「これはどういう意味ですか」
「ここまで対応する想定ですか」
「この判断は誰がしたのでしょうか」

もちろん、必要な確認もあります。

一方で、最初から前提や意思決定の経緯が共有されていれば、発生しなかった往復もあります。
エルボーズではAI議事録についても継続的に検証しています。
人の記憶や個々のメモだけに依存せず、誰が何を話し、何が決まり、何がまだ決まっていないのかを記録として残しやすくする。
こうした情報が次の工程まで共有されていれば、後から認識を合わせ直すための作業を減らしやすくなります。

AI自身が、新しい詰まりをつくることもある

AIを導入すれば、必ず業務が滑らかになるわけでもありません。

AIは、指示すれば大量のアイデアや選択肢を生成できます。
人間なら「これ以上出しても確認できない」と考えるところでも、AIは何十個でもアウトプットできます。

問題は、そのあとです。

AIが100個の案を作ったとして、人間が100個すべてを確認し、比較し、意思決定しようとすれば、
今度は「確認する工程」がボトルネックになります
AIによって一つの工程を高速化した結果、
次の工程へ大量の仕事が流れ込み、新しい滞留が生まれた状態です。

エルボーズのPodcast「会議を増やすAI、減らすAI」でも、
AIを活用した結果、確認事項が増え、かえって会議が増えてしまうケースについて議論しています。

ここで必要なのは、さらにAIを高速化することではありません。
そもそも、この工程では何を決める必要があるのか。
人間側の業務設計を見直す必要があります。

「何をAI化するか」より先に、業務がどこで止まっているかを見る

AI活用を考えるとき、

「議事録をAI化しよう」
「資料作成をAI化しよう」
「調査をAI化しよう」

というように、個別のタスクから考えることは少なくありません。

しかし、業務全体の生産性を考えるなら、その前後まで見る必要があります。
エルボーズがプロジェクトの中で行っているのも、
システムやAIの話に入る前に、論点、決定事項、まだ決まっていない前提、
業務と業務の関係を外に出し、関係者が同じ構造を見られる状態をつくることです。

業務を可視化すると、

「AからBへ何が渡っているのか」
「Bは何があれば動けるのか」
「その間に、人が整理・確認・転記しているものはないか」

といった部分が見えてきます。
業務を一覧にするだけではなく、業務と業務の間で何が起きているかを見ることが重要です。

AIを置くなら、業務の「つなぎ目」も候補になる

AIは、個人の作業を速くするためだけに使うものではありません。
人から人へ仕事が渡る前に、情報を整理したり、一定の形式に整えたりする役割を持たせることもできます。

たとえば、上司からメンバーへ仕事を渡す前に、AIが要件を整理し、

  • 目的
  • 対応内容
  • 必要な情報
  • 期限

などを一定の形式に整えて渡す。
ここでAIが担っているのは、単なる文章作成ではありません。

仕事の受け渡し方をそろえることです。

個人がそれぞれ異なる使い方でAIを利用するだけでなく、業務のつなぎ目そのものにAIを組み込む。
そうすることで、一つのタスクが速くなった効果を、次の工程にもつなげやすくなります。

自社のAI活用を見るときに確認したいこと

すでにAIを業務に取り入れているのであれば、個々の作業時間だけでなく、次のような点を確認してみると、別の課題が見えてくるかもしれません。

  • AIが作った成果物を、次に受け取るのは誰か
  • 受け取った人は、そのまま次の行動へ移れるか
  • 判断するために、別の場所から情報を探す必要はないか
  • 成果物を再整理・転記する作業が残っていないか
  • 前提を確認するためのやり取りが繰り返し発生していないか
  • AIが増やしたアウトプットを、人間が確認しきれなくなっていないか

こうした部分に詰まりがあるなら、次にAI化するタスクを探すよりも、まず業務のつなぎ目を見直した方が効果が大きい可能性があります。

AI活用を見る単位を、タスクから業務フローへ

AIによる工数削減は重要です。

ただし、それだけを見ていると、
「この作業は5倍速くなったのに、なぜ会社全体では変化を感じないのか」
ということが起こります。

そんなときに見るべきなのは、AIの性能だけではありません。
その仕事のあとに誰がいるのか。
その人は、受け取ったものを使ってすぐに動けるのか。
間に整理、確認、情報収集といった作業が残っていないか。

AI活用の効果を、ひとつのタスクではなく、仕事が次の仕事へ渡っていくところまで含めて見る。

「どの業務をAI化するか」から考えるのではなく、
「業務は、今どこで止まっているのか」から考える。

AIで業務全体の生産性を変えるためには、この視点が重要だとエルボーズは考えています。
エルボーズは、製造業・建設建築・医療などのリアル産業を中心に、これまで約200件のAI・DX推進プロジェクトに携わってきました。

Podcast「リアル産業とAIの現場トーク」では、こうした現場から見えていることや、AI・DX推進の中で起きている試行錯誤を継続的に発信しています。

以下のメディアから現場トークを聴けます。

AI・DX推進についてのご相談

エルボーズは「業務のAI推進を、まるごと担う代理店。」として、現場調査や業務プロセスの再設計から、AIエージェント・業務システムの開発、ツール導入、社内浸透までを支援しています。

「どの業務にAIを入れるべきか」がまだ決まっていない段階でもご相談いただけます。
AIを導入することからではなく、現在の業務がどこで止まっているのかを整理するところからご一緒します。

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